レモンパン

こんがらがっている、ちいさなじぶんのせいりのために書いています。

ガメラの歌をもう一度

映画「ガメラ」の主題歌。

わたしは自転車に乗るたびに、それを思い出す。

 

桜が散り始め、そろそろ上着もいらなくなってくる頃。

わたしは当時3歳の息子を自転車の補助いすに乗せて、よく外に連れて行った。

補助いすとは、自転車のハンドルにつけられる小さないすのことだ。

手軽に子どもを自分の自転車に乗せられる、危なっかしい便利グッズといえる。

 

その日もわたしは息子を補助いすに乗せて、駅から自宅に向かう坂を下っていた。

4月の穏やかな天気のなか、風を切って走るのが気持ちがよかったからか、息子はいきなり歌い出した。

 

「ガ〜メラ〜、強いぞガメラ〜。ガメーラ〜、ララララ〜」

大きな声で歌う歌う。

道行く人は、当然振り返る。

「やめてー」と思うものの、気持ちよく歌っているのを止めるのもなんだかなと思ってそのまま。

 

クスクス笑われつつ、歌っている本人は注目を浴びていることには全く気がつかず、まるで自転車にくっつけたスピーカーのよう。

いつまで歌っとんじゃこいつは・・・。

そろそろやめて欲しい。

こんなラジオ付きの自転車のつもりはない。

わたしだけが焦る。

 

結局、家に帰るまでの10分ぐらい、息子はずーっと歌いっぱなしであった。

 

今、息子は23歳。

自転車に乗ってガメラの歌を歌う、なんてことは全くない。

全くないどころか、若者らしく友だちと騒ぐということもないし、自分の殻に閉じこもりがちで、鼻歌でさえ歌わない。そんな風に成長してしまった。

 

勝手なもので、そうなってしまうと「ガメラの歌」が妙に懐かしい。

あれは、子どもが元気に育っている証だったのだなあと、今頃、気づく。

 

子どもが成人してしまうと「元気でいる証拠」がわかりにくい。

日々、きちんとご飯を食べて、自分の居場所に出かけてくれれば、それが元気な証拠だとは思うけれど、あのガメラの歌ほどのインパクトがない。

うん、わたしはちょっとさみしいんだ。

 

息子よ、いつかカラオケで、「ガメラの歌」を歌ってくれないかな。

あ、そうだ。わたしが死ぬ前にお願いしようかな。

ガメラの歌、プリーズ」

きっと息子は「は?」と言ったままフリーズするだろう。

 

とりあえず、YouTubeで「ガメラの歌」を探してみるか・・・。